2013.7.13~15

Schwarzwald(シュヴァルツヴァルト=黒い森)の北に位置する小さな村Zavelstein(ツァヴェルシュタイン)には、歴史を感じる沢山の泉が点在していた。大小の泉がなんと19もある村で、「泉を巡るハイキング」を半日かけて楽しむことに。

この小さな村に何故、沢山の泉があるかと申しますと、それはひとえに賢い方がいらっしゃったからでございます。こちらは、村の中心に位置する城址。かつての栄華は遠い昔しと語るように、今では見張り塔だけが当時の姿を残すのみ。17世紀、この城の主は賢い親方さまであらしゃり、この村に水道を整備したんだそう。水道といったって、今のような蛇口を捻れば水が出るなんてもんではござんせんが、村のあちこちに泉を作り村人がいつでも安心して使える水を供給したんでございます。それ故、小さな村に沢山の泉が残っているそうな。

朽ちかけた城の隅にも泉が湧き出ておりました。ここは19の泉を回るスタート地点。泉ポイントを制覇しつつ村散策へと出発です。

その前に、まずは城の塔へと登り小さな泉の村Zavelstein(ツァヴェルシュタイン)を一望。黒い森に囲まれた村には高い建物が一切ない。たった28mしかない高さの塔だが、天辺からの見晴らしは素晴らしい。

城には、かつて城主の酒蔵であった大きなワインケラーの跡も残っていた。地下へと続く階段を降りると太陽が遮断され、とても涼しい。300hl(ヘクトリットル)ものワインが貯蔵できる蔵は、勿論今は空でございますがね。

ここは木組みの家も多く、ドイツらしい典型的な雰囲気の村。最近気付いたというか感じたことのひとつに、木組みの家には癒し効果が有るんではないかと・・・。レンガ造りや石造りの建物から発せられる空気感とは、圧倒的に何かが違う。木組みの家からは、暖かいオーラが発せられている気がする。「木組みヒーリング」、疲れた人に効果ありだと思うんだけど。

城近くには小さな市庁舎や古い教会も建っている。こちらは、素朴な外観のKirche St. Georg(聖ゲオルク教会)。巨大で荘厳なゴシック建築の教会とは対照的な佇まい。13世紀に防壁につくられた小さな礼拝堂を起源とする教会は、おとぎばなしにでも出て来そう。

村の通りの看板は、真っ赤な薔薇に飾られていた。野性味溢れる薔薇が咲き乱れるのも、ドイツの夏の風景。

暫く歩くと、またまた泉に出くわした。昔は飲み水としても使われていたんでしょうが、今はどこの泉にも「飲み水ではございません」の表示。だが村人は庭に撒く水を汲みに来たりと、泉をフル活用しているようだ。1624年から人々のライフラインとして活躍している泉は、今も現役。

とあるお宅の裏庭にわんさと積み上げられた丸太。煙突がある家には大きな暖炉があるのでしょう。泉や丸太を眺めていると、今が21世紀と忘れてしまう程のどかな風景。

ドイツ人の家や庭を綺麗にする執念といったら、それは凄い。春から夏にかけては、大抵どの家の窓も庭も見てくださいと謂わんばかりに花で彩られている。時に花だけではなく、可愛らしいガーデン用のミニチュアが庭を賑わしていたりする。とあるお宅の前庭は小人やアヒルや船や灯台などが素敵に配置されていた。その中でもミニチュアカフェがとびきり可愛い。これ、きっと手作りでしょうな。お宅の庭拝見(勝手に覗いているだけだが)、ドイツでの密かな楽しみでございます。

素敵な庭拝見をしてまわっていたら、民家の玄関口に泉を見つけた。イヌも歩けば棒に当たるどころではないほど、泉に当たる。水を確保するのが大変だった時代、家からすぐ近くに泉があるというのはとんでもなく便利だったに違いない。小さいな泉にちょこんとのった小鳥が印象的でございました。

村散策をしていたら、泉近くにこんな器具が置かれていた。但し書きを見てみると、第2次大戦まで使われていた果物圧搾器だそう。木製の古い道具フェチなんで、じっくり観察してしまう。

こちらも、とある泉の近くにあったもの。但し書きがなかったんで用途は不明だが、形状からするとやはり圧搾器ではないだろうか。「1857年」の年代もののようである。

泉の村は森に囲まれいて、緑茂る林道歩きも楽しめる。

林の中で見つけたお楽しみが、こちら。「トム・ソーヤ」に出てくるハックルベリーが住んでいたような小屋だわね。上ってみたい衝動を抑え、至近距離で眺める。散策途中でこんな小屋に出くわすと、冒険しているようでなんだかワクワクしてくる。

集落を過ぎると、目の前は一面、緑の海。この草原、3月になると一面のクロッカスで覆われるんだそう。「泉の村」は、「クロッカスの村」としても有名なんでございます。白、紫のグラデーションがそれはそれは見事なんだと聞き、季節外れの来訪が残念でならなかった。

クロッカス通りと名のつく場所も、既に花は刈り込まれ丸坊主。

草原に不思議な機械を見かけ覗いてみると、同じ景色にクロッカスが咲き乱れている。季節外れの来訪者のために、村が用意したのは、”Guckkästen(グックケステン)”と呼ばれる覗きマシーン。クロッカスが咲く草原の3箇所に設置されているそうだ。機会があれば是非、一面クロッカスの海を見たいもんである。

花一つない草原かと思ったら、小さな紫色の野の花が咲いていた。

村を囲む林や草原を歩き中心地まで戻ってくると、先ほど上った城の塔が見えてきた。

ぐるりと村を一周するも店らしき店がない。途中、可愛らしい雑貨屋を1軒だけ見かけたものの、ほんとに何もなかったざんす。小さなまちにもコンビニが乱立する日本とは対照的。ドイツに来たての頃はコンビニがない不安ってのがそりゃあ大きかったのだが、コンビニの便利さは忘却の彼方。時間の流れが違うので、この村には必要なさそうですな、コンビニ。

そうそう、もう1軒。村はずれに燻製屋がございました。看板娘が燻製を手にしているのだが、彼女が被るのはこの地方の民族帽。赤い大きなボンボンが沢山ついた帽子でございます。

立派な像の但し書きには、”Landeswettwerb(ランデスヴェットヴェルプ)”という、お国自慢コンテストで2回に渡り金賞と銀賞を1回獲得し、1985年には国指定の保養地に認定されたと書かれている。小さい村ながら、立派な保養地なんだわね。

こちらの泉で涼をとり、間髪入れず隣まちまでハイキングへと出かけることにいたしました。

泉の村の入り口には、村の名前が刻まれた可愛らしい看板。

暫くは、またまた林道をひた歩き。天気にも恵まれ、泉を巡る散策は楽しいものと相成りました。この村を訪れるなら、クロッカスの咲く3月がいいんでしょうな。

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